3770Kを殻割りしてリキプロを塗ってみた

前の記事で、3770Kは水冷でオーバークロックをしても水温に対してコア温度がかなり高くなってしまい、熱的に限界が来てしまったと書きました。そこで、巷でウワサの殻割りをしてダイについている熱伝導ペーストをLiquid Pro(通称リキプロ)に変えてやれば、コア温度が下がってもっとクロックが伸びるだろうということで、やってみました。

作業

CPUは裏面にチップ部品がついているので、それを痛めないように導電性スポンジの上で作業しました。最初、メスのような形の精密ナイフ(厚さ0.38mm)や、ホビー用のデザインナイフをヒートスプレッダと基盤の間に差し込もうとしましたが、なかなか入らず、かといってあまり力をかけてしまうとCPUを壊してしまうかもしれないと思ったので、さらに薄刃のものを探し、OFLAの特選黒刃の0.2mmのものを手に入れて改めて挑戦しました。

そうすると案外あっさりと刃が滑り込み、ヒートスプレッダの接着剤を切ることができました。あまりカッターの刃を奥まで差し込むとダイを傷つけるかもしれないので、ヒートスプレッダのカドの部分から刃を入れて、深く入らないように気をつけながら隣のカドまで刃を滑らせる、ということを4辺それぞれに対してやりました。
その後ヒートスプレッダをつまんで持ち上げると、あっさり基板側からはずれ、ペーストまみれのコアがむき出しになりました。

ペーストをエタノールで塗らしたキムワイプでふき取り、余計な接着剤をカッターでそぎ落としたところと、その後ダイの上にリキプロを塗ったところが次の写真です。

リキプロは表面張力が強いのか丸くなってしまい、うまく薄くぬれなかったので写真のように盛り上がった感じになってしまいました。しかしその後ヒートスプレッダを載せなおしたときに特にはみ出したりはしませんでした。ヒートスプレッダはエポキシ接着剤(右の写真)で接着しました。もし、あとでトラブルがあったとき分解できないと厄介なので、接着剤はヒートスプレッダの四隅に少量ずつつけるだけにしました。固まる前にマザーボードのソケットに取り付けて、問題なく取り付けられることを確認し、ソケット金具と、水枕の締め付けで固定してそのまま接着剤を硬化させてしまうことにしました。
ダイにはリキプロを使いましたが、水枕とヒートスプレッダの間は前の記事で使っていたものと同じ熱伝導グリス(ワイドワークから出ている信越のG-751)です。殻割りリキプロの効果の比較のためと、リキプロはアルミを侵すらしいですが銅でも多少変色などがあるとか、時間がたつと固まるらしいので水枕を外すとき大変になりそうなので。
これで熱伝導材のリキプロ化とマザーボードへの取り付けが完了したので、水枕を取り付け水冷系を確認して電源を入れてみることにしました。

4.8GHz動作

PCの電源を投入すると無事動作したので(なぜかBIOSの起動画面で"New CPU Installed"と表示されましたが)、前回の記事で、負荷時のコア温度が97℃になった4.8GHz動作をさせてみました。前回と同じように水温は30℃になるように制御、室温は25℃前後です。
次のグラフが、その4.8GHzでのPrime95実行中の一番高いコア温度の約12時間の推移です。最高温度が74℃で、リキプロ化前の97℃と比べて23℃低下しました。

水枕とCPUの間のグリスも塗りなおしているので、純粋にリキプロ化による効果が23℃とは言い切れませんが、かなり下がりました。

5.0GHz動作

Tj.maxの105℃に対してかなりの余裕が出たので、前回は105℃に達してまともに動作しなかった5.0GHzを試してみました。
コア電圧は1.46V、上と同様のグラフが次の図です。

最高温度は85℃となり、リキプロ化前では熱でダメだった5.0GHzの動作ができました。
それにしても結構低いコア電圧で5.0GHzいけたのは驚きです。良い石なのでしょうか。ただ、それ以上のクロックは、少しだけ試してみましたが大きく電圧を上げないと回らない感触でした。5.2GHzでPrime95がしばらく走るには1.65Vほどのコア電圧が必要で、コア温度も105℃近くまでになりそうでした。
5.0GHzのときのCPU-ZとCoreTempの画像を貼っておきます。

まとめ

クロック リキプロ化前 リキプロ化後
4.8GHz 97℃ 74℃
5.0GHz 105℃? 85℃

というわけで、ヒートスプレッダとダイの間の熱伝導材をリキプロにすることで、20℃ほどコア温度を低下させることができました。以前からひとつの目標というか区切りの数字と考えていた5.0GHzでの常用ができそうでいい気分です。
しかしながら、リキプロはアルミを腐食させ、銅は大丈夫とのことですが、シリコンのダイに塗って果たして大丈夫なのか、全然知らないので不安はあります。長期的な使用でどうなるのか、金属で導電性のあるリキプロがそのうち垂れてきて、どこかがショートしてしまわないか…。いろいろ不安はありますが、まあ、このまま常用してみます。

注意

本記事に書かれているようなオーバークロックヒートスプレッダを取り外すような行為は基本的にメーカーの保証外です。ヒートスプレッダを取り外すことで、数万円もするCPUを壊してしまうリスクが少なからずあります。また、ここに書かれていることは私の環境での動作例でしかなく、ほかの環境やほかのCPU個体で行っても同じようになるとは限りませんし、保証は一切ありませんのでご注意ください。